CHANDLER SIMPSON
MLB最多の盗塁。
バットは、下から3番目に遅い。
チャンドラー・シンプソンという打者
2026年 MLB スイング速度ランキング ワースト10
まずは、今年のMLBでバットが一番遅い10人です。(平均バットスピード・時速。1位が最も遅い)
リーグ平均は116.3km/h。この下位10人は、平均を7〜16km/h下回ります。
1位はスティーブン・クワン、2位はルイス・アラエス。そして3位が、今回の主役、チャンドラー・シンプソンです。
平均バットスピードは時速104.8km。それなのに、2026年は打率.306、盗塁は46。ア・リーグで最も多く盗んだ、俊足の打者です。
104.8km/h
平均バットスピード
46
盗塁(ア・リーグ最多)
.306
打率
この記事では、まずシンプソンがどんな人物なのかを紹介します。
プロフィール
マイナー2年連続で盗塁王。足で勝ち上がった
シンプソンは、ジョージア州のセントピウスX高校で、最終学年の打率が.450。その後、アラバマ大学バーミングハム校(UAB)を経て、ジョージア工科大学に進みます。大学では打率.434を記録し、この年のNCAA1部リーグでトップでした。
2022年のドラフトで、タンパベイ・レイズが全体70位で指名。マイナーでは、走塁の才能が一気に花開きます。
● 2023年:115試合で94盗塁(リーグ最多タイ)
● 2024年:110試合で104盗塁(リーグ最多)、打率.355
2024年のプレミア12では、アメリカ代表として銅メダルを獲得。打率.459、盗塁7は大会最多で、大会のオールワールドチームにも選ばれています。
メジャーデビューは2025年4月19日。同年7月には、18試合連続安打も記録しました。
2026年の成績
三振率は7.8%で、規定打席に達した打者の中ではアラエスに次いで2番目に低い数字です。本塁打は0本、長打率.356と、長打はほとんどありません。それでも、打率.306、出塁率.333はMLB平均(打率.244、出塁率.318)を上回っています。
スイングのデータ:なぜ「下から3番目」なのか
ハードスイング率0.5%は、規定スイング数以上の203人の中で3番目に低い数字。フルスイングは、ほとんどしません。
空振り率は9.4%とMLB平均(22.7%)の半分以下。芯で捉えた当たりの割合は41.7%で、MLB平均(25.3%)の1.6倍、リーグ3位です。
そして、際立っているのが平均打球角度です。1.2度。MLB平均の13.9度と比べて、打球がほとんど上がっていません。
スイングのイメージ動画
2025年のシンプソンのハイライト動画です。バットが体の前で完結しているか、背中側へ回り込んでいないか。スイングの終わりに注目して見てください。
体修塾の見解:体格や打球速度に頼らない、もう一つの見本
クワンとアラエスは、「遅いバットで、芯を外さない」ことで結果を出しました。
シンプソンは、そこに「自分の武器に合わせて打撃を設計する」という視点を加えてくれる選手です。
身長180cm。バットスピードは下から3番目の104.8km/h。平均打球速度は134.5km/hと、パワーで勝負する打者ではありません。それでも打率.306。MLBで最も多くの盗塁を決めるという、もうひとつの武器があります。
104.8km/hのバットで、打球はどこまで飛ばせるか
体修塾の打撃教科書では、ボールを芯で捉えられたかを「スクエアアップ率」で測ります。
期待値最大打球速度(スクエアアップ率100%)
ヘッドスピード × 1.23 + 球速 × 0.23
スクエアアップ率 = 実測の打球速度 ÷ 期待値最大打球速度
目標は「スクエア80」(期待値の80%)
この式に、シンプソンのバットスピード104.8km/hと、MLB平均の球速144.4km/hを当てはめます。
104.8 × 1.23 + 144.4 × 0.23 = 128.9 + 33.2
≈ 162.1km/h
これが、シンプソンのスイングで芯に100%当たったときの期待値です。
実際の平均打球速度は134.5km/h。スクエアアップ率にすると、約83%になります。
クワン(約86%)、アラエス(約88%)には及びませんが、MLB平均(約81%)を上回っています。バットスピードが約12km/h遅い中で、期待値の8割以上を引き出しているということです。
※球速はMLB全投球の平均値を使用。シンプソンの最高打球速度171.9km/hは期待値162.1km/hを超えていますが、平均より速い球と速いスイングが重なった場合の数字です。
その秘密は、4つの徹底
シンプソンは、この4つを、忠実に実行している打者だと考えます。
この4つを徹底しているから、バットに当たる。当たるから、三振しない。そして、低く転がった打球を、足で安打に変えていく。
特にポイント4は、バットスピードが遅い選手ほど見てほしい視点です。ボールが来るのは前面だけ。前面で完結するスイングだから、遅いバットでも、ボールを捉える時間を無駄にしません。
クワンは「見極めて四球」、アラエスは「振って当てて打率」。シンプソンは「当てて、転がして、走る」。バットスピードが遅くても、自分の武器に合わせて打撃を作れば、MLBで結果は残せます。
一方で、長打がほとんどなく、OPSは.689。打球速度も低めで、課題がないわけではありません。ただ、「パワーがなければ通用しない」という思い込みを崩すには、十分な材料です。
まとめ
● シンプソンは、2026年のMLBで下から3番目にスイング速度が遅い打者(平均104.8km/h)
● それでも打率.306、三振率7.8%、盗塁46はア・リーグ最多
● 体修塾が最も大事にするスクエアアップ率は約83%。MLB平均(約81%)を上回っている
● 「ポイントを近づける」「打球を上げない」「芯で捉える」「前面だけで勝負する」を徹底し、足という武器を活かして、MLBの第一線に立っている
パワーがないから無理だ、と決めつける必要はありません。自分の武器は何か。それを活かす打ち方を、どれだけ突き詰められるか。シンプソンは、その見本です。
データ出典:Baseball Savant、MLB Stats API(2026年9月30日時点)
「前面」と「後面」とは何か
ポイント4の「前面」「後面」は、体修塾が打撃を考えるときの土台にしている言葉です。打席に立って構えたとき、自分の体を境に、空間は2つに分かれます。
● 前面:自分の腹側、ホームベース側の空間。ボールが実際に通過する場所
● 後面:自分の背中側の空間。ボールがここを飛んでくることはない
● 後面はさらに、構えたときのトップハンド側(バットを引いて溜める準備の場所)と、ボトムハンド側(ボールを捉えたあと、バットが抜けていく結果の場所)に分かれる
ボールが来るのは前面だけです。それなのに、多くの選手は、ボトムハンド後面へ振り切ることに力を使っています。
この考え方は、選手や指導者がフォームの前に知っておくべき「原理原則」として、体修塾がまとめています。
あなたのスクエアアップ率、測ってみませんか?
スクエアアップ率は、体格やパワーに関係なく、練習で高められる数値です。
自分のスイングで出せる打球速度を、どれだけ引き出せているか。体修塾の個別指導では、その数値を確認したうえで、あなたのスイングに合った改善を一緒に進めます。
