ア・リーグ最多の盗塁。バットは下から3番目に遅い。

CHANDLER SIMPSON

MLB最多の盗塁。
バットは、下から3番目に遅い。

チャンドラー・シンプソンという打者

2026年 MLB スイング速度ランキング ワースト10

まずは、今年のMLBでバットが一番遅い10人です。(平均バットスピード・時速。1位が最も遅い)

1
スティーブン・クワンSteven Kwan
100.4 km/h
2
ルイス・アラエスLuis Arraez
101.6 km/h
3
チャンドラー・シンプソンChandler Simpson
104.8 km/h
4
チェイス・メイドロスChase Meidroth
107.7 km/h
5
ネイサン・ルークスNathan Lukes
107.8 km/h
6
アイザック・パレデスIsaac Paredes
108.1 km/h
7
ヘラルド・ペルドモGeraldo Perdomo
108.3 km/h
8
アーニー・クレメントErnie Clement
108.3 km/h
9
ジェイク・マンガムJake Mangum
109.4 km/h
10
ザック・マッキンストリーZach McKinstry
109.4 km/h

リーグ平均は116.3km/h。この下位10人は、平均を7〜16km/h下回ります。

1位はスティーブン・クワン、2位はルイス・アラエス。そして3位が、今回の主役、チャンドラー・シンプソンです。

平均バットスピードは時速104.8km。それなのに、2026年は打率.306、盗塁は46。ア・リーグで最も多く盗んだ、俊足の打者です。

104.8km/h

平均バットスピード

46

盗塁(ア・リーグ最多)

.306

打率

この記事では、まずシンプソンがどんな人物なのかを紹介します。

プロフィール

名前
チャンドラー・シンプソン(Chandler Simpson)
生年月日
2000年11月18日(25歳)
出身
アメリカ・ジョージア州アトランタ
身長・体重
180cm・77kg
投打
右投左打
ポジション
外野手
所属
タンパベイ・レイズ

マイナー2年連続で盗塁王。足で勝ち上がった

シンプソンは、ジョージア州のセントピウスX高校で、最終学年の打率が.450。その後、アラバマ大学バーミングハム校(UAB)を経て、ジョージア工科大学に進みます。大学では打率.434を記録し、この年のNCAA1部リーグでトップでした。

2022年のドラフトで、タンパベイ・レイズが全体70位で指名。マイナーでは、走塁の才能が一気に花開きます。

●  2023年:115試合で94盗塁(リーグ最多タイ)
●  2024年:110試合で104盗塁(リーグ最多)、打率.355

2024年のプレミア12では、アメリカ代表として銅メダルを獲得。打率.459、盗塁7は大会最多で、大会のオールワールドチームにも選ばれています。

メジャーデビューは2025年4月19日。同年7月には、18試合連続安打も記録しました。

2026年の成績

試合
151
打率 / 出塁率 / 長打率
.306 / .333 / .356
OPS
.689
安打
175
本塁打 / 打点
0 / 38
四球 / 三振
26 / 48
盗塁
46(成功率76.7%)
二塁打 / 三塁打
16 / 6

三振率は7.8%で、規定打席に達した打者の中ではアラエスに次いで2番目に低い数字です。本塁打は0本、長打率.356と、長打はほとんどありません。それでも、打率.306、出塁率.333はMLB平均(打率.244、出塁率.318)を上回っています。

スイングのデータ:なぜ「下から3番目」なのか

平均バットスピード
104.8km/h
ハードスイング率
0.5%
スイング長
2.00m
空振り率(スイングあたり)
9.4%
芯で捉えた当たり(Statcast・スイングあたり)
41.7%
平均打球速度
134.5km/h
最高打球速度
171.9km/h
平均打球角度
1.2度
打球速度153km/h以上の割合
13.4%

ハードスイング率0.5%は、規定スイング数以上の203人の中で3番目に低い数字。フルスイングは、ほとんどしません。

空振り率は9.4%とMLB平均(22.7%)の半分以下。芯で捉えた当たりの割合は41.7%で、MLB平均(25.3%)の1.6倍、リーグ3位です。

そして、際立っているのが平均打球角度です。1.2度。MLB平均の13.9度と比べて、打球がほとんど上がっていません。

スイングのイメージ動画

2025年のシンプソンのハイライト動画です。バットが体の前で完結しているか、背中側へ回り込んでいないか。スイングの終わりに注目して見てください。

体修塾の見解:体格や打球速度に頼らない、もう一つの見本

クワンとアラエスは、「遅いバットで、芯を外さない」ことで結果を出しました。

シンプソンは、そこに「自分の武器に合わせて打撃を設計する」という視点を加えてくれる選手です。

身長180cm。バットスピードは下から3番目の104.8km/h。平均打球速度は134.5km/hと、パワーで勝負する打者ではありません。それでも打率.306。MLBで最も多くの盗塁を決めるという、もうひとつの武器があります。

104.8km/hのバットで、打球はどこまで飛ばせるか

体修塾の打撃教科書では、ボールを芯で捉えられたかを「スクエアアップ率」で測ります。

期待値最大打球速度(スクエアアップ率100%)

ヘッドスピード × 1.23 + 球速 × 0.23

スクエアアップ率 = 実測の打球速度 ÷ 期待値最大打球速度

目標は「スクエア80」(期待値の80%)

この式に、シンプソンのバットスピード104.8km/hと、MLB平均の球速144.4km/hを当てはめます。

104.8 × 1.23 + 144.4 × 0.23 = 128.9 + 33.2

≈ 162.1km/h

これが、シンプソンのスイングで芯に100%当たったときの期待値です。

実際の平均打球速度は134.5km/h。スクエアアップ率にすると、約83%になります。

シンプソン
MLB平均
バットスピード
104.8km/h
116.3km/h
期待値最大打球速度(100%)
162.1km/h
176.3km/h
スクエア80の目標値
129.7km/h
141.0km/h
実測の平均打球速度
134.5km/h
142.8km/h
スクエアアップ率
約83%
約81%

クワン(約86%)、アラエス(約88%)には及びませんが、MLB平均(約81%)を上回っています。バットスピードが約12km/h遅い中で、期待値の8割以上を引き出しているということです。

体修塾が最も大事にしている数値

それが、スクエアアップ率です。

ヘッドスピードや打球速度の絶対値は、体格に左右される面が大きい。だから体修塾は、「自分のヘッドスピードに対して、どれだけロスなく打球速度に変換できたか」を最重視します。これは、練習で高められる数値です。

※球速はMLB全投球の平均値を使用。シンプソンの最高打球速度171.9km/hは期待値162.1km/hを超えていますが、平均より速い球と速いスイングが重なった場合の数字です。

その秘密は、4つの徹底

シンプソンは、この4つを、忠実に実行している打者だと考えます。

POINT 1

ポイントを近づける

ボールを体の近くまで呼び込んで、コンパクトに打つ。ハードスイング率0.5%、空振り率9.4%(MLB平均22.7%)。振っても、ほとんど空振りしません。

POINT 2

打球を上げない

平均打球角度は1.2度(MLB平均13.9度)。フライを打ち上げず、低い打球を野手の間に転がします。足の速さを活かせる打ち方です。

POINT 3

芯で捉える

Statcastが集計する「芯で捉えた当たり(スクエアアップ)」は、スイングあたり41.7%(MLB平均25.3%、リーグ3位)。バットスピードが遅い分、当てる精度で勝負しています。

POINT 4

前面だけで勝負する

シンプソンのスイングは、ボトムハンド側の後面に、まったく行きません。ボールが来るのは前面だけ。力を使うのも前面だけで、ボールが来ない後面へ振り抜くことには、力を使っていません。

この4つを徹底しているから、バットに当たる。当たるから、三振しない。そして、低く転がった打球を、足で安打に変えていく。

特にポイント4は、バットスピードが遅い選手ほど見てほしい視点です。ボールが来るのは前面だけ。前面で完結するスイングだから、遅いバットでも、ボールを捉える時間を無駄にしません。

クワンは「見極めて四球」、アラエスは「振って当てて打率」。シンプソンは「当てて、転がして、走る」。バットスピードが遅くても、自分の武器に合わせて打撃を作れば、MLBで結果は残せます。

三振率
シンプソン 7.8% / MLB平均 22.1%
打率
シンプソン .306 / MLB平均 .244
出塁率
シンプソン .333 / MLB平均 .318
盗塁
シンプソン 46(ア・リーグ最多)

一方で、長打がほとんどなく、OPSは.689。打球速度も低めで、課題がないわけではありません。ただ、「パワーがなければ通用しない」という思い込みを崩すには、十分な材料です。

まとめ

●  シンプソンは、2026年のMLBで下から3番目にスイング速度が遅い打者(平均104.8km/h)
●  それでも打率.306、三振率7.8%、盗塁46はア・リーグ最多
●  体修塾が最も大事にするスクエアアップ率は約83%。MLB平均(約81%)を上回っている
●  「ポイントを近づける」「打球を上げない」「芯で捉える」「前面だけで勝負する」を徹底し、足という武器を活かして、MLBの第一線に立っている

パワーがないから無理だ、と決めつける必要はありません。自分の武器は何か。それを活かす打ち方を、どれだけ突き詰められるか。シンプソンは、その見本です。

あわせてクワンの記事、アラエスの記事もどうぞ。

データ出典:Baseball Savant、MLB Stats API(2026年9月30日時点)

「前面」と「後面」とは何か

ポイント4の「前面」「後面」は、体修塾が打撃を考えるときの土台にしている言葉です。打席に立って構えたとき、自分の体を境に、空間は2つに分かれます。

●  前面:自分の腹側、ホームベース側の空間。ボールが実際に通過する場所
●  後面:自分の背中側の空間。ボールがここを飛んでくることはない
●  後面はさらに、構えたときのトップハンド側(バットを引いて溜める準備の場所)と、ボトムハンド側(ボールを捉えたあと、バットが抜けていく結果の場所)に分かれる

ボールが来るのは前面だけです。それなのに、多くの選手は、ボトムハンド後面へ振り切ることに力を使っています。

この考え方は、選手や指導者がフォームの前に知っておくべき「原理原則」として、体修塾がまとめています。

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打撃の本質

スイングフォームを教える前の原理原則

前面・後面、骨盤の回旋、体とベースの関係。フォームの前に、選手も指導者も知っておくべきことを整理しました。まずは、無料の紹介ページをご覧ください。

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スクエアアップ率は、体格やパワーに関係なく、練習で高められる数値です。

自分のスイングで出せる打球速度を、どれだけ引き出せているか。体修塾の個別指導では、その数値を確認したうえで、あなたのスイングに合った改善を一緒に進めます。

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投稿者: 大林智也

新潟県内で「体修塾」という名で野球の個別指導をしています。 激しい変化の時代に、野球にどのような可能性があるのか、日々考えています。 そして、野球をplayすべての選手たちが「野球を楽しむ」ことができるように、変えていきたいと思っています。そのための、「個別指導」。これからの野球は個別指導・少人数練習が主流になります。このmind setを広げるために2016年から活動しています。 [経歴] 新潟県柏崎市出身 中学:柏崎リトルシニア 高校:新潟県立柏崎高等学校 大学:日本体育大学 体育学 学位 中高保健体育教員免許保持 大学院:上越教育大学大学院 教育学 修士 スポーツ心理学専攻 2019年まで学校現場で子供たちを指導してきました。2020年に独立。 選手としては五流。ですが、体育大学に入学できるほどスポーツ全般・運動が得意です。加えて、大学院までいき運動学の研究の分野にも関わっています。 ただ野球が上手いだけでない。 「野球」×「運動学」×「教育現場」×「研究」×「トレーナー」を掛け合わせ野球指導者です。 よろしくお願いします。 #体修塾 #個人指導  #ラプソード

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