バットは下から5番目に遅い。28歳でデビューした遅咲きの打者、ネイサン・ルークスのスクエアアップ率

NATHAN LUKES

バットは、下から5番目に遅い。
28歳でデビューした遅咲きの打者。

ネイサン・ルークスという打者

2026年 MLB スイング速度ランキング ワースト10

まずは、今年のMLBでバットが一番遅い10人です。(平均バットスピード・時速。1位が最も遅い。右端は2026年の本塁打数)

1
スティーブン・クワンSteven Kwan
100.4 km/h
3本
2
ルイス・アラエスLuis Arraez
101.6 km/h
6本
3
チャンドラー・シンプソンChandler Simpson
104.8 km/h
0本
4
チェイス・メイドロスChase Meidroth
107.7 km/h
16本
5
ネイサン・ルークスNathan Lukes
107.8 km/h
10本
6
アイザック・パレデスIsaac Paredes
108.1 km/h
25本
7
ヘラルド・ペルドモGeraldo Perdomo
108.3 km/h
9本
8
アーニー・クレメントErnie Clement
108.3 km/h
9本
9
ジェイク・マンガムJake Mangum
109.4 km/h
5本
10
ザック・マッキンストリーZach McKinstry
109.4 km/h
4本

リーグ平均は116.3km/h。この下位10人は、平均を7〜16km/h下回ります。

1位はクワン、2位はアラエス、3位はシンプソン、4位はメイドロス。そして5位が、今回の主役、ネイサン・ルークスです。

平均バットスピードは時速107.8km。2026年は打率.277、10本塁打。トロント・ブルージェイズの外野手として、125試合に出場しました。

ルークスの特別なところは、成績の数字だけではありません。メジャーデビューが28歳。8シーズンのマイナーリーグを経て、たどり着いた打者です。

107.8km/h

平均バットスピード

28豁ウ

メジャーデビュー

.277

打率

この記事では、まずルークスがどんな人物なのかを紹介します。

プロフィール

名前
ネイサン・ルークス(Nathan Lukes)
生年月日
1994年7月12日(32歳)
出身
アメリカ・カリフォルニア州サクラメント
身長・体重
180cm・82kg
投打
右投左打
ポジション
外野手
所属
トロント・ブルージェイズ

8シーズンのマイナーを経て、28歳でメジャーデビュー

ルークスは、カリフォルニア州のセンター高校から、カリフォルニア州立大学サクラメント校に進みました。3年間でチーム歴代最多となる通算244安打を記録しています。

2015年のドラフトで、クリーブランド・インディアンス(現ガーディアンズ)から7巡目で指名されます。ただ、そこからの道のりは長いものでした。

●  2015〜2016年:クリーブランドの傘下
●  2016〜2021年:タンパベイ・レイズの傘下
●  2022年:トロント・ブルージェイズの傘下(トリプルA)

8シーズンのマイナーリーグを経て、メジャーデビューは2023年3月30日。28歳でした。初本塁打は2024年9月28日。そして2025年には135試合で12本塁打を打つまでになります。

2026年は125試合に出場し、打率.277、10本塁打、41打点。苦労人が、遅い年齢でつかんだ居場所です。

2026年の成績

試合
125
打率 / 出塁率 / 長打率
.277 / .327 / .387
OPS
.714
安打
113
本塁打 / 打点
10 / 41
二塁打
15
四球 / 三振
25 / 64
盗塁
1

三振率は14.2%。MLB平均(22.1%)を大きく下回ります。四球率は5.6%で、MLB平均(8.9%)より低く、積極的に振っていく打者です。OPS.714は、MLB平均(約.718)とほぼ同じ水準です。

突出した数字があるわけではありません。ただ、バットスピードが下から5番目の打者が、リーグ平均並みのOPSを残している。そこに、ルークスの打撃の価値があります。

スイングのデータ:なぜ「下から5番目」なのか

平均バットスピード
107.8km/h
ハードスイング率
3.2%
スイング長
1.94m
空振り率(スイングあたり)
16.1%
芯で捉えた当たり(Statcast・スイングあたり)
29.4%
平均打球速度
139.9km/h
最高打球速度
173.0km/h
平均打球角度
7.8度
打球速度153km/h以上の割合
29.1%
バレル率
2.5%

スイング長1.94mは、規定スイング数以上の203人の中で、3番目に短い数字です(MLB平均は2.23m)。大振りをせず、短く、コンパクトに振る打者です。

空振り率は16.1%と、MLB平均(22.7%)より低く、芯で捉えた当たりは29.4%で、MLB平均(25.3%)を上回ります。

平均打球角度は7.8度。MLB平均(13.9度)より低く、ゴロとライナーで勝負するタイプです。打球速度は平均139.9km/h、最高173.0km/h。バットスピードが遅い分、打球速度も控えめです。

スイングのイメージ動画

2025年のルークスのハイライト動画です。大きく振り回すのではなく、短い距離でバットを出して、ボールを捉えるスイングに注目して見てください。

体修塾の見解:短く振る、という選択

クワンとアラエスは「当てる」、シンプソンは「走る」、メイドロスは「前で捉えて長打」でした。

ルークスが見せてくれるのは、「短く振る」という選択です。

身長180cm。バットスピードは下から5番目の107.8km/h。スイング長は、MLBで3番目に短い。大きく振って飛ばすのではなく、短い距離でバットを出して、ミスを減らしています。

107.8km/hのバットで、打球はどこまで飛ばせるか

体修塾の打撃教科書では、ボールを芯で捉えられたかを「スクエアアップ率」で測ります。

期待値最大打球速度(スクエアアップ率100%)

ヘッドスピード × 1.23 + 球速 × 0.23

スクエアアップ率 = 実測の打球速度 ÷ 期待値最大打球速度

目標は「スクエア80」(期待値の80%)

この式に、ルークスのバットスピード107.8km/hと、MLB平均の球速144.4km/hを当てはめます。

107.8 × 1.23 + 144.4 × 0.23 = 132.6 + 33.2

≈ 165.8km/h

これが、ルークスのスイングで芯に100%当たったときの期待値です。

実際の平均打球速度は139.9km/h。スクエアアップ率にすると、約84%になります。

ルークス
MLB平均
バットスピード
107.8km/h
116.3km/h
期待値最大打球速度(100%)
165.8km/h
176.3km/h
スクエア80の目標値
132.6km/h
141.0km/h
実測の平均打球速度
139.9km/h
142.8km/h
スクエアアップ率
約84%
約81%

MLB平均(約81%)を上回る約84%。バットスピードが約8km/h遅い中で、打球速度の差は約3km/hにまで縮まっています。遅いバットで出せる打球速度を、きちんと引き出している証拠です。

体修塾が最も大事にしている数値

それが、スクエアアップ率です。

ヘッドスピードや打球速度の絶対値は、体格に左右される面が大きい。だから体修塾は、「自分のヘッドスピードに対して、どれだけロスなく打球速度に変換できたか」を最重視します。これは、練習で高められる数値です。

※球速はMLB全投球の平均値を使用。ルークスの最高打球速度173.0km/hは期待値165.8km/hを超えていますが、平均より速い球と速いスイングが重なった場合の数字です。

その秘密は、4つの徹底

ルークスは、この4つを、忠実に実行している打者だと考えます。

POINT 1

短く振る

スイング長1.94mは、MLBで3番目に短い数字(MLB平均2.23m)。ハードスイング率も3.2%で、フルスイングはほとんどしません。

POINT 2

空振りを減らす

空振り率16.1%(MLB平均22.7%)、三振率14.2%(MLB平均22.1%)。短く振るから、バットがボールに届く確率が高くなります。

POINT 3

芯で捉える

Statcastが集計する「芯で捉えた当たり(スクエアアップ)」は、スイングあたり29.4%(MLB平均25.3%)。スクエアアップ率は約84%で、MLB平均(約81%)を上回ります。

POINT 4

打球を低く保つ

平均打球角度は7.8度(MLB平均13.9度)。打ち上げず、ゴロとライナーで野手の間を狙う打ち方です。

この4つを徹底しているから、バットスピードが遅くても、ミスが少ない。ミスが少ないから、打率.277、OPS.714というMLB平均並みの数字が残ります。

クワンは「見極めて四球」、アラエスは「振って当てて打率」、シンプソンは「当てて、転がして、走る」、メイドロスは「前で捉えて長打」。そしてルークスは「短く振って、ミスを減らす」。バットが遅くても、勝ち方は一つではありません。

三振率
ルークス 14.2% / MLB平均 22.1%
打率
ルークス .277 / MLB平均 .244
出塁率
ルークス .327 / MLB平均 .318
長打率
ルークス .387 / MLB平均 .400
本塁打
ルークス 10本

一方で、長打率はMLB平均をわずかに下回り、四球も多くありません。突出した武器があるタイプではありません。それでも、遅いバットで28歳からMLBに居場所をつくった。その事実が、「パワーがなければ通用しない」という思い込みを崩してくれます。

まとめ

●  ルークスは、2026年のMLBで下から5番目にスイング速度が遅い打者(平均107.8km/h)
●  8シーズンのマイナーを経て、28歳でデビュー。2026年は打率.277、10本塁打、OPS.714
●  体修塾が最も大事にするスクエアアップ率は約84%。MLB平均(約81%)を上回っている
●  「短く振る」「空振りを減らす」「芯で捉える」「打球を低く保つ」を徹底し、遅いバットでMLBの居場所をつくった

パワーがないから無理だ、と決めつける必要はありません。自分のスイングで出せる打球速度を、どれだけ引き出せているか。ルークスは、その見本です。

あわせてクワン、アラエス、シンプソン、メイドロスの記事もどうぞ。

データ出典:Baseball Savant、MLB Stats API(2026年9月29日時点)

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投稿者: 大林智也

新潟県内で「体修塾」という名で野球の個別指導をしています。 激しい変化の時代に、野球にどのような可能性があるのか、日々考えています。 そして、野球をplayすべての選手たちが「野球を楽しむ」ことができるように、変えていきたいと思っています。そのための、「個別指導」。これからの野球は個別指導・少人数練習が主流になります。このmind setを広げるために2016年から活動しています。 [経歴] 新潟県柏崎市出身 中学:柏崎リトルシニア 高校:新潟県立柏崎高等学校 大学:日本体育大学 体育学 学位 中高保健体育教員免許保持 大学院:上越教育大学大学院 教育学 修士 スポーツ心理学専攻 2019年まで学校現場で子供たちを指導してきました。2020年に独立。 選手としては五流。ですが、体育大学に入学できるほどスポーツ全般・運動が得意です。加えて、大学院までいき運動学の研究の分野にも関わっています。 ただ野球が上手いだけでない。 「野球」×「運動学」×「教育現場」×「研究」×「トレーナー」を掛け合わせ野球指導者です。 よろしくお願いします。 #体修塾 #個人指導  #ラプソード

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